私人逮捕について説明します！【大阪の探偵事務所】 | 大阪の探偵ならケイジ探偵事務所 | ブログ

先日私人逮捕系ユーチューバーが逮捕されました。

逮捕の要件は名誉棄損ということでしたが、そもそも私人逮捕とは、「現行犯逮捕」が大前提であり、暴行や傷害、痴漢（強制わいせつ）、窃盗（万引き、車上狙い等）、器物損壊など、実際に犯行を目撃していて、犯行が明らかな場合に警察官に代わって逮捕できるというもので、これらの条件を満たしていないと逮捕することはできませんし、場合によっては逆に暴行罪や今回のように名誉棄損罪として処罰される対象となります。

そもそも、「逮捕」というものは、「通常逮捕」、「緊急逮捕」、「現行犯逮捕」3つの要件に分かれており、通常逮捕が基本となります。

通常逮捕とは、「裁判官から発せられた逮捕状に基づいて被疑者（犯人）を逮捕すること」を言います。日本は令状主義が原則ですから、この通常逮捕が基本の逮捕であり、推奨される逮捕形態になります。

次に緊急逮捕ですが、これにはそもそもの前提条件として、死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があることが必須要件となります。つまり、一定以上の罪を犯した者という縛りがあり、かつ、緊急を要し、逮捕状を請求する暇がない場合に限られており、緊急逮捕後は速やかに逮捕状を取得し、それを被疑者に示さなければならないのです。

そして、現行犯逮捕ですが、前述したように、これは罪を犯したことが明らかである場合（犯行を目撃している又は行われた直後の犯人）であれば、逮捕状なしに、警察官ではない一般人であっても逮捕できるという超例外的な逮捕になります。

当然警察官であれば、通常逮捕（※実務上地域課員（交番のお回りさん）はしない）、緊急逮捕、現行犯逮捕、いずれも経験している場合がほとんどです。

そして、実務的に最もこれらを経験する可能性が高いのが「覚せい剤事件」になります。

覚せい剤は所持しているだけで罪となり、所持していなくても使用していれば逮捕することができます。

覚せい剤の検挙について流れを説明しますと、大抵は職務質問（若しくは不審者や内通者からの通報）が端緒となります。

職務質問をして所持していれば特殊な薬品を使って覚せい剤の呈色反応を示した時点で現行犯逮捕となります。

未所持であってもその言動や行動から覚せい剤使用が疑わしい場合は警察署に任意同行した上、採尿して簡易鑑定にかけ、陽性となれば緊急逮捕となります。

ここで、疑陽性又は陰性だったが後の本鑑定で陽性となった場合は通常逮捕となるのです。

ここで注意してもらいたいのですが、警察官は覚せい剤を見れば高確率で本物かどうか判断することができますが、それはあくまで警察官の主観であり、被疑者の言動や行動も加見したうえで、ほぼ１００％覚せい剤だと思われる状況であったとしても、必ず試薬を使って簡易検査をしなければなりません。

そしてその呈色反応を確認し、覚せい剤と判定された時点で逮捕することができるわけです。

つまり、実質的に薬物事件に関しては私人逮捕することはできないことになります。

それだけではありません。

たとえ警察官であっても、職務質問時に例えば無理やり、強引に、半ば強制的に覚せい剤を発見し、鑑定した場合、職務質問自体の違法性が疑われ、罪に問えないどころか、最悪の場合、特別公務員暴行陵虐罪に問われてしまう可能性まであるのです。

当該ユーチューバーは、警察官に対して、情報提供を行ったところまではよかったと思いますが（※おとり捜査の可能性もあるので情報提供のでどころが不透明ではあるが）、その後立ち去ろうとした男性（売人？）に対して羽交い絞めにした時点で暴行罪が成立します。

もちろんケガをすれば傷害罪になりますし、死んだりすれば傷害致死罪となります。

ちなみに私が警察官として現場に臨場していたら、おそらく逮捕していたと思います。（後に即釈放される可能性は高いが）

たとえ当該男性が売人であり、覚せい剤を所持していたとしても、そもそも私人逮捕になりえないので、逮捕制圧が成立することはありえません。

なので暴行罪のみが成立し、現に罪を行っている状況を目撃しているわけですから現行逮捕できるわけです。

警察官も誰もが法律に精通しているわけではなく、特に地域課となると、新米が多いうえに、刑法犯を専門に扱う刑事課と違ってやはり経験が乏しい場合が多いので（撮影までされているから余計に）「逮捕」に踏み切るのは難しかったのかなと思います。

ちなみに、もしこの男性が暴行を受けたと被害届を出していれば当該ユーチューバーは通常逮捕される可能性もあります。

いずれにしても、私人逮捕は超例外的な逮捕であり、悪い奴を逮捕したいと思うのであれば、警察官になるのが一番かなと思います。

ニュースで取り上げられていたので経験を踏まえてお話しさせて頂きました。